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魔法の時代

宇梶達也

砂場の近くで、年少組のふうちゃんと、年中組のゆりちゃんが作った目玉焼きをいただいている時、年長組の女の子に呼ぱれた。

「先生、ちょっときて!」

腕を引っ張るのは、りえちゃんである。ふうちゃんとゆりちゃんに目玉焼きの礼を言い、りえちゃんに引っ張られながら歩いて行くと、鉄棒の前あたりにめぐちゃんがニコニコしながら、しゃがんでいた

「これ、ほって見て!」

りえちやんは、めぐちやんの前にある白砂で作られた三つの山を指さした。

「なに?これ」
「いいからほってみて!」
私は、おそるおそる山の一つを手で掘ってみた。2〜3回程、砂をどけると中から白いプラスチックがでてきだ。
「おおっ。なにか、はいっているぞ」
二人は、ニヤニヤしながら「それ、バクダンだよ」
「えっ」
私は驚いて、出てきたものを手にとって見てみると、それはまさしくミルクの量を計るサジのような形をしたバクダンであっだ。
ドカーンと音がしたと同時に私は耳をふさいだ。そしてゆっくり彼女遵を見ると案の定ニヤニヤしている。
「今度はこっち掘ってみて!」
言われるまま、二つ目の山を掘ってみた。また中に何か入っている。
「これは、なんだろう?」「それもパクダン」「えっ」
同じように手に取ってみるとまぎれもなく、ヨーグルト容器のような形をしたバクダンだった。
「ドカーン」
再び爆音が鳴った。3つ目の山も当然、スコッブのような形をしたパクダンだった。
3度の爆風にあおられた私のところに、年中組のよりちゃんが、だんごのさし入れを持ってきてくれた。私はそれを一口で食べた。
「ありがとう。なんだか力がわいてきた。このだんごは、力のでるだんごかもしれない」そう言って試してみると、年長組の女の子二人を軽く持ち上げることができた。そこへ、年中組のりょうくんが壊れたホースリールで道路を作りながら近付いてきた。
「道だぞ。道だぞ」「とおらせて」「いいよ」
数人で道路をすっ飛ばして行くと、リングブランコのところで行き止まりになった。来た道を戻って行くと、新しい道がいくつかできていた。しぱらくドライブを楽しんでいると、よりちゃんが新しいダンゴを作ってきてくれた。
「ありがとう。ちょうど、おなかが減っていたんだ」
食べようとすると、よりちゃんが「それ、お母さんになるダンゴだよ」
「お母さんになるダンゴ?」ひとくち食べると、私はお母さんになっていた。気がつくと、いやがる赤ぢやんを抱いてミルクを飲ませていた。
「これはもとに戻るダンゴ」
ダンゴを食べると私はもとに戻っていた。その後も、次々に子ども達がいろいろなダンゴを食べさせてくれた。「きゃ−、せんせいがプタになった」と、ほなみちゃんが叫び、数人の子ども達がはなれていった。怪獣になるダンゴをくれたのは、ひろくんである。また子ども達は一斉に逃げ出していった。毒のダンゴで苦しがっていると、みんなが薬のダンゴを与えてくれた。私の体は、様々な変身を繰り返したが、その都度もとに戻る薬のダンゴを与えてくれた。
「これ、トンボになるダンゴだよ」
私は懲りずに食べてみた。すると不思議なことに、トンボになっていた。羽根を広げると簡単に飛ぶことができる。秋の園庭をくるりとまわり、ジャングルジムの一番上に降りると、そこに年少組のセーラームーンがいた。園庭で遊ぶ子ども達を眺めていると、下から数人の子ども達が、「トンボだ、トンボを捕まえろ!」と言いながら登って来る。ふわりと再び私は園庭を飛び回り、地面に着地した。子ども達は、まだ追ってきている。
「先生、これバッタになるダンゴ!」「ありがとう!」
ダンゴを食ぺるとバッタになってしまった。トンボのように空を飛ぶことができなかった。『しまった!』と思いながら園庭をビョンピョン跳ねていると、すぐ子ども達に捕まってしまった。
「よし!虫カゴに入れよう」子ども達に連れられ、アスレチックの形をした虫カゴに入れられた。
「だしてくれ!」そう叫ぶ私の声を聞いてすぐ、年中組のゆうじくんが助けにきてくれた。たのもしい味方だ。
「先生!ここから逃げろ!」しかし、年少組のまいちゃんがニコニコしながら立ちふさがった。
「じやあこっちだ!」ゆうじくんは、違うカゴの入り口を開けてくれた。しかしながら再び、まいちゃんが「ダメ」とニコニコ立ち塞がるのだ。
「仕方がない。誰か怪獣になるダンゴをくれないかなあ」すぐに、それは用意され、怪獣になった私は、簡単に虫カゴから出ることができた。しかしながら、怪獣退冶の正義の味方は、トンボ採りの子ども達より多くなっていた。たのもしい味方だったゆうじくんでさえ、目を輝かせ、ウルトラマンになっている。年長組のかずやくんも格好いいポーズでこちらをにらんでいる。波動挙、カメハメ波、「月に代わっておしおきよ!」の言葉に囲まれながら、怪獣の私も戦い続けた。子どもたちの猛烈な攻撃に私は大きなダメージを何度も負った。私もカメハメ波で何度も応戦したが、ずるいことにちっとも効かない。
「誰か一緒にカメハメ波をしてくれないかなあ」と言うとすぐに、まいちゃんが味方になってくれた。二人で手を添えて、「カ・メ・ハ・メ・波!」と叫ぶと数メ一トル離れた年中組の女の子に偶然当たったようだ。
「二人でしたら、あたったぞ。今度はもう少し大勢でしてみよう」
空に向けたり、地面に向けたりして、数人で会わせて、カメハメ波の練習を、何度もしてみた。
「よし、みんなで見えない怪獣をやっつけに行こうよ!」
「行こう!行こう!」
芝生の草原に向かって怪獣退治の一群は歩き出した。

 数日後…

「これ、ウサギになるクスリ」「これ、トンボになるクスリ」
差しだされた薬を、二つ合わせて飲むと、ウサギトンボが生まれた。
「これ、三角になるクスリ」と、じゅんやくん。
「これ、怪獣になるクスリ」と、ことちやん。
もちろん、三角怪獣になった。
子ども達のバイオテクノロジーは続く。