
宇梶二美
ある日のお帰りバス待ちの時間のことです。ふと教室の中を見ると女の子が泣いています。お着替えの服を前にして…。一体何があったのかなあ??とそばに行ってみると、お着替えの袋に入っているズボンが嫌だと泣いているのです。私は、折角お母さんが用意して下さっていたのですが、「そっかー このズボンいやなんだね。よし、じゃあ幼稚園にあるお着替えを貸してあげるよ」と言い、女の子を箪笥の部屋へ連れていきました。そして何かいい服はないかと並べてみたのですが、女の子のお着替え用ズボンより素敵な服はありません。「どっちがいい?」「…」「自分のがいいかな?」「うん」「じゃあ今日はこのズボンで我慢してね。お母さんにお手紙を書こうね。」と言ったら、納得して自分のズボンをはいて帰りました。
私の娘の話になりますが、私の選んだ服が気にいらないと絶対着ません。年少さんくらいまでだったでしょうか。黙って私の選んだ服を受け入れてくれたのは…。私が一人で選んで買ってきた服、勿論かわいいと思うから買ってきているのですが、趣味が合わないようで絶対着ないものがあります。髪型も同じです。三つ編みにしたらいいのにとか、お団子にしたらキュートなのになんて思うのですが、彼女はイヤだーと私の言いなりにはなりません。その度に何で?と腹がたつのですが、よく考えてみれば仕方のないことです。だって私にも好みというのがあって、彼女にも私とは違う好みがあるのですから。いわゆる我が儘というのではなく、自分の主張なんだと、今は娘のその主張が妙に大切なことのように思えたりもしています。そういう娘が年長さんだった冬、私は肺炎になって入院したことがありました。その時、お見舞いに来てくれた娘は必ず、私が日頃この服とこの服の組み合わせがかわいいよ。お母さんはこれが大好きだなと言っていた服装をしていました。いつも「これは?」と用意してあげても、絶対いやだと言って着なかった服を私のためにあえて選んで着て来てくれたのです。それは本当に彼女の私への思いや、やさしさが伝わってきて嬉しかったものです。たかが服、でも服装は一番自分を表すものかもしれません。自己主張があって、そしてとびっきりのやさしさがあって… 子どもは親とは違う確かな一人の人間として成長しているということですね。「このスカート、はきたい!」「いやだ!このズボン」
ときたら、ついに来たかこの時が…と喜んで眺めているのも楽しいかもしれませんね。我が子のセンスがどんなものかを…