荒尾第一幼稚園 保育の発展史

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荒尾第一幼稚園 保育の発展史

子どもたちの姿から学び、環境や関わり方を見直してきた歩みです。

旧サイトに掲載した、2023年7月までの記録です。本文の「現在」「最近」などは執筆当時を指します。

1990年代

 今では当たり前に聞こえる「遊びが大切」という言葉。1990年代にはまだ新鮮に聞こえました。1989年の幼稚園教育要領によって、大きくとりあげられるようになった「遊び」ですが、当時の保育の現場では戸惑いや誤解があったように感じます。それが半信半疑や小さな疑問に変わり、保育の現場だけでなく今でも地域社会の教育観に強く影響を与えているように思います。

 1990年代、「幼児教育で大切ことは何か」を説明しながら荒尾第一幼稚園の保育が変わり始めました。

初めて製作したホームページのTOP画像

 

【遊びの時間の拡大】

クラスの活動の合間の休み時間のような存在だった「遊びの時間」を拡大しました。倉庫に仕舞われていた遊具を園庭に出し、砂場にはたくさんの容器を置きました。

【園庭での水の使用】

園庭で「水」を使って遊んでも良いことにしました。汚れてはいけない制服を見直しました(※現在では制服はありません)。園庭や砂場で水を使うと「泥遊び」が始まります。遊びがダイナミックになりました。

【生活廃材での製作】

 ある年の「雛人形製作」。部品パーツを子どもたちに配って保育者の言う順に貼っていく活動をやめて、たくさんの空き箱や材料を用意して行うことにしました。「雛人形を作ろう!」と声をかけると子どもたちが黙々とつくり始めて、感激したの(大袈裟ではなく)を覚えています。(※余談ですが、前の晩、この保育が上手く行くのか心配で眠れなかったのを覚えています)

【運動会 種目見直し】 運動会の種目の数々を見直し、廃止しました。

【「ごっこランド」スタート1994年】

お遊戯会を、「ごっこ遊び・劇遊び」を主にした「想像で遊ぶ会」に改めました(余談ですが、これもやはり前の晩、眠れなかったのを覚えています)。第1回目、子どもたちにとっては楽しい会と思えました。しかしお客さんにとっては良い会に思えなかったことを幼稚園としても自覚しました。そんな中でも意図を理解してくれる保護者が数人いらっしゃいました。ここから改善に改善を重ねました。現在では子どもたち、保護者、保育者にとって楽しい行事に成長しました。この行事は今でも、私たちにとって「新しい行事」という感覚がしています。

2000年代

2000年の幼稚園教育要領。表紙のイラストに「保育者」も描かれていました。1989年のものは「子ども」だけ。「子ども」と「保育者」が描かれたことで「幼児と共により良い教育環境を創造するように」というメッセージが込められたと研修会で聞きました。この文言は1989年のものにも書かれていますが、「子ども中心」が極端な形で「保育者は極力関わらない」などと少し誤解されて広がっていたところもあったとように思います。「そうではなく共にですよ」を伝え直した教育要領に感じました。

2000年代の荒尾第一幼稚園は、90年代に取り組み始めたことが成熟し始めました。

【生活廃材での製作】は日常的な保育となる。

【子どもたちの遊び】のなかにある黙々とした活気に気づく。場を知り尽くした遊びの充実に気づく。

【運動会「挑戦」】運動会の見直しから始まった種目、挑戦。遊びの時間に練習した竹馬や縄跳び等を運動会に披露する、遊びと運動会を結びつける取り組み「挑戦」子どもたちのたくさんの粘り強さ、達成感を生み出す活動となってきました。

【運動会「母有志ダンス」】徐々にエスカレートしはじめる。最近は運動会「陰のメインイベント」に成長。

【園庭の芝山】

2005年 砂場の位置を水道の近くに移動しました。園庭に小さな山を作りました。子どもたちの遊びの中での特別な場所になったり、日常的に上り下りの運動が行えるようになりました。

【「ごっこランド」の発展】

会場のスタッフの協力。照明などの相乗効果で、お話の世界が魅力的になっていきました。園職員にとっても手応えを感じる行事になっていきました。ごっこランドの評価が変わっていくのを感じました。

この頃の「ごっこランド」は「お客さんにとってわかりやすく」をセットを作って説明することを心がけました(※のちにこの方針はまた変化します)。

【「ごっこランド」の保護者の協力】

2007年、物語の展開が複雑になり前日の協力委員とのリハーサルだけでは難しくなってきたました。数日前からお手伝いできる保護者に幼稚園に来てもらい練習することが始まりました。

【「ごっこランド」の劇作り】

2008年 年長組の劇作り。子どもたちと先生が作り上げる劇の完成。以後、子どもたちとの小道具作り、子どもとのセリフの検討等、意欲が膨らんでいく保育指導計画が確立。

【ごっこランドの「かえるくんシリーズ」】
2008年の本番中。「今、保育者がいなかったら子どもたちはどう動くだろう?」というアイデアが浮かびました。子どもたちが友達と協力して課題を解決していく年長組の『かえるくんシリーズ』が2009年に始まりました。

2008年 新しい幼稚園教育要領

解説書のレイアウトが格段に見やすくなりました。項目がすべてページの上部にあり、ハンドブックのように後から必要な箇所を探しやすくなりました。内容は2000年のもの文言整理と研修会でききましたが、子ども同士の関係の「深まり」が印象にのっこています。

2009年

【保育の日常記録の電子化】

子どもたちの記録を電子化し、後で振り返りやすくする。後に簡単に共有できるようになり、保育の情報発信が充実していく。

2010年代

【登る運動 ボルダンリグの小屋】

園庭に縦に登る運動遊具がなかったので、園庭環境を考え小屋の壁を利用した「ボルダリング」を設置。

【缶蹴り】

園庭に小屋が出来て、隠れられる場所が出来たので「缶蹴り」を年長組に教えてみました。以後、子どもたちから下の世代に受け継いでいく園の遊びの文化となりました。

【泥ダンゴの白砂】

「斜面上の運動」を使って白砂を採取する方法が始まり、下の世代に受け継がれていく園の文化となりました。

2012年

【数日間に渡る造形活動】

ある大学の先生が講師となった園長研修会の内容を、書類を整理していた事務職員から聞いて知り、興味を持ちました。ちょうど新採で来てもらう先生の出身校だったので、連絡をとってもらい大学の研究室を訪ねました。

(このことがその後の荒尾第一幼稚園を導くターニングポイントになりました)

そこである園の実践が載ったコピーをいただきました。【数日間に渡る遊びの中での劇作りの活動】。舞台の幕の開閉がうまくいかず、何日も友達と協力して取り組んでいることが印象に残りました。

 今現在(2023年)、数日間続く造形活動はあたり前のように行われていますが、この当時はまだ稀にしか起きません。「友達と協力して課題を解決してく」この活動の大切を感じていた頃です。協働性、創意工夫、思考力などを育むために「数日間に渡る造形活動」が起きる保育環境を作り始めました。物的環境、一日の流れ、造形活動のあり方を見直しました。

【七夕会人形劇】

「数日間に渡る造形活動」の取り組みのひとつとして、七夕会に向けて年長組が人形劇を作る活動を行いました。これがのちのiPad映画製作に発展していきます。

【雛人形協同製作】

翌年の夏の教師研修会で実践発表の担当が回ってきました。「協働的活動」というタイトル。どんな実践を発表するか職員で話し合いました。「遊びの場面で『協働的活動』を記録するのは現在の職員の人数では無理」「活動を設定して、その中で記録していくことが現実的」、そんな話し合いから「雛人形協同製作」の案が出ました。私は90年代に行った廃材を準備して行った前の晩、眠れなかった実践を思い出しました。素材に布などをもっと充実させて行えば「いいかもしれない!」とアクティブ・ラーニングの実践が始まりました。実践を担当した担任の指導計画や毎年の実践記録で改善が加えられ、現在の本園の大きな活動に発展しました。

雛人形協同製作活動について

 年長組3学期(2月から3月)、身近な廃材・素材を使って、実際の七段飾りの雛人形と同じ大きさの雛人形を作る2週間の継続した協同製作。この期間、朝の集まり、昼食、帰りの集まり以外、子どもたちの時間の使い方を自由にしている。園の行事、雛祭り集会までに雛人形完成させることを目標とした活動。

ねらい

・友達と協力しながら、共通の目的に向かって取り組み、やり遂げる達成感を味わう

 →出来上がった後に、みんなで喜ぶ瞬間を作りたい。

・友達と思いや考えを出し合いながら取り組んだり、経験したことをさまざまな方法で取り入れながら、できた満足感や達成感をもつ。

・見通しを持ち、計画しながら責任感を持って取り組む。

【年長組「雛人形協同製作」の改善】

2012年 いかに友達と結びつけるかが保育者の課題。

2015年
・単に「友達に聞いてみたら」ではなく、必要感を感じさせることが大切。
・朝の会で「今日頑張ること」を言う時、大雑把なことでなく、できるだけ具体的な言葉を引き出すことが大切。これは、現在の日常のプロジェクト活動につながる。

2017年 製作の過程を写真で記録。

2018年 製作の過程を子ども向けドキュメンテーションに発展。

2020年 製作作業場に子どもたちの休憩所ソファを設置。その前にドキュメンテーションを掲示する。友達のやり方などの情報をドキュメンテーションから得る。この環境から友達と結びつける保育者の関わりが必要なくなる。

「様々なプロジェクト活動」を参照

【運動会「母有志ダンス」】

ダンスの難易度はエスカレートするが踊れるお母さんたち。以後、難易度の調整が「母有志ダンス」の課題。難易度が揺らぎながら楽しい活動として現在に至ります。

【iPadを使った映画製作】

2015年。七夕会人形劇をiPadを使った映画製作にして行う。その中でブルーバックの前で撮影し、子どもが描いた背景と合成します。合成の作業は職員がします。iPadは効果音探しのアフレコに使用。園内で音が出るものや場所を探して録音していきます。映画制作は協同製作であり話し合いの場をたくさん作ります。また創意工夫を必要とする場面もたくさん生み出します。

 映画にしたことで七夕会が4歳児、3歳児にもわかりやすいものになりました。この活動も改善をかさねて、現在の本園の大きな活動に発展しています。

【年長組 箱積み競技】

 協働性を育む機会として、運動会年長組競技に「箱積み」を導入しました。作戦の話し合いや伝え合い、協働性、積み重なった箱から数の概念の理解する機会も見られます。

【ライトテーブル】

2016年に購入。光と影の実践を充実させる。

【写真による保育場面の記録】

担任が全員カメラ(iPod touch)を持つ。

【大型ドキュメンテーション】

保育を保護者に知らせる大型のポスター型ドキュメンテーションを作り始める。保育の振り返りや職員間の共有にもなりが保育の質の向上にもなっていると思われる。

2017年

【白い布の柱の空間】

お遊戯室に、白い布をいくつも垂らし神殿のような空間を作る。動きたくなる環境、隠れたくなる環境。踊りたくなる環境。リズムに合わせたくなる環境。自由に子どもたちの動きや表現を促す環境づくり。

【透明カラーブロック】光と色の実践を充実させる。障子紙のスクリーンを製作。

【電子顕微鏡、すりこぎ、はかり】探究する環境を充実させる。

【工夫を生み出す造形活動】

活動の最初にデザイン画や完成図を描き、保育者とそのデザイン画について話をして、見通し・計画性を育んでから造形活動を行うと、「こういうものになっちゃった」という製作ではなく「こうしたい。どうしよう」という工夫が生まれる活動となることを知る。

【保育者の仕事を見直す(1)】

保育者の仕事の中で減らせること、無くせること検討し、前日の保育の準備時間を確保す。

2018年新しい幼稚園教育要領改訂

 新しい幼稚園教育要領改訂。資質・能力、10の姿、主体的・対話的で深い学び、新しい言葉が出てきました。難しいけど、理解が深まりそうと思えるものでした。

それでも最初に私(園長)が躓いたのは「知識の基礎」と言う言葉。「知識の基礎ってなんだ? 優しい知識ってことか。どんなに簡単な知識でも知識は知識じゃないか」と。どんなに考えても理解できなかったことがピアジェのシェマや構成主義についての文章を読んで、霧が晴れていくように私なりに納得できました。心が動かされる体験(簡単に言うと「遊び」、多様な体験、主体的な活動)の大切さを説明できる言葉を得た思いでした。資質能力の育成など、新しい幼稚園教育要領や学習指導要領の考えを地域に説明いくことは、子どもたちの幸せにつながると強く思います。

【園庭の雨樋、コンテナ、漏瑚】

体験の質を向上させるための環境づくり。協同の活動や探究する環境を作るために雨樋、コンテナ、漏瑚の数を検討する。

【土粘土】保管していた土粘土を活用しはじめる。

【ごっこランド「セット」から「想像」への見直し】

ごっこ遊びの番組。セットを作ることによって世界観を作ることから、想像で描けばセットがなくても世界観を描けることに気がつきました。参考にしたのは朗読劇の手法です。演技の一部などを丁寧に作り込むと、物語の奥行きを感じます。なるべくセットを減らして想像で補えるようにしたため、物語の場面転換が容易になりより物語の可能性が広がりました。

【保育者全員がiPadを持つ】

iPadの写真を見ながらミーティングをするなど、保育の共有が深まる。ドキュメンテーションが作りやすくなる。

【保育室の棚・ダイニングテーブル】

保育室環境の機能アップ。素材置き場をたくさん作る。
保育室にダイニングテーブを設置。子どもたちの製作活動の拠点となる。

【選んで活動・プロジェクト活動】

クラスで大きなものをみんなで作る。これが何日も続き、工夫や協働を生み出し、環境を通した保育が展開し始める。現在、その形態が「選んで活動」として定着する。

【中庭】
自然や不思議に出会う場、中庭・畑ができる。
年長組はごっこランドの劇に使う大背景画を中庭の壁を使って製作する。以後、恒例の活動となる。

【OHP】光と影と色の活動が充実

【iPad園児用】
iPad園児用を増やす。映画作りの人形作り(ペープサート)をiPadで制作するようになる。演出や話し合いにたくさん時間をかけられるようになる。

【iPadでBGM作り】
ごっこランドの年長組劇では、iPadによるBGM製作が始まる。以後、2021年の1学期にはお化け屋敷BGM作りに発展する。

【保育室にイーゼル・絵の具環境の充実】

溶き方の違う絵の具を用意するなど画材を選択できる環境等作る。大雑把な製作物を塗るところ、絵を丁寧にかける場所、絵の具の痕跡遊び

2020年代

保育室環境の充実

2020年

【探究・気づきが園内研修のテーマ】

遊びの場面で気づきや探究の場面を写真に撮り、園内研修を行う。それを動画にしてYouTubeで保育の説明を試みる。現在も「保育の説明」は試行錯誤中。

【デジタルサイネージ・情報公開】

お遊戯室横の窓に大型テレビを設置して日常の子どもの写真をスライドで流す。

【保育者の仕事を見直す(2)】

保育の準備時間のさらなる確保。残業をなくす。さらに休憩時間を確保するため、15分刻みの園務分担表を作成する。学校の給食当番を知らせる円の当番表のようなものでは作れなかった時間を作り出すことができた。降園時間も保護者に協力していただき、短時間に圧縮。これは大きな意義のある見直しになったと思います。

2021年

【A3のドキュメンテーション】

日常的に手軽に製作できるようにフォーマットなど改善する。ドキュメンテーションの製作サイクルを早める。

2022年

【年中組保育室に雛壇】

保育室に集合場所の雛壇を設置する。保育室環境を見渡せたり、その後高さのある活動が生まれやすくなる。

【工房設置】

木、金属、白砂、ビー玉、土粘土、石、たくさんの物と出会う半屋外空間の「工房」を設置。

【各保育室に子ども用デジカメ】

各保育室にデジカメを置いて、子どもが自由に使えるようにする。

【お遊戯室に様々な色の布】

表現活動・ごっこ遊びで何かに見立てたりする「布」をすぐに使えるように置く。

2023年

【保育室の素材置き場・充実】

保育室の素材の並べ方をさらに充実させる。職員が利用する園内の置き場も改善し充実させる。

【想像で遊ぶ空間・お遊戯室】

想像で遊ぶ空間としてお遊戯室を改造。床を張り替え、舞台袖幕などをつけて、物語に没頭しやすく即興劇が行いやすい空間にする。

【見方・考え方を生かした保育】

現在、「数日間にわたる造形活動」は、子どもたちの日常になっている。お化け屋敷、恐竜たちのいる場所、OHPのお話作り、100かいだてのいえ、そら、エレベーター、太陽系、立体の「100かいだて」など。

現在の「園内研修」のテーマは「見方・考え方を生かした保育」の「生かした」の部分。どのような環境で保育が展開していくのかを職員で研修しています。

いつの時代も保育が良くなるように全力で力を注いでいました。「もうこれ以上は出来ない」と思うくらい。それでも毎年、新しいことに気づきます。そのたびに卒園生たちにすまない気持ちになります。「あの時は気づかなくてごめんね」と。そして感謝の気持ちも。たくさんの子どもたちと、先生たち・歴代の先生たちと、そして本当に暖かく見守って全力で保育に向かわせてくれた保護者の方々。みんなのおかげで荒尾第一幼稚園の保育は発展して行きます。この後の行に、どんなことが書かれるのでしょうか。今も保育が楽しくてたまりません。

2023年7月 園長 宇梶達也

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