「落書き」と「作品」の間
中庭のデッキ沿いに「お絵かきの壁」があります。ドキュメンテーションで役目を終えた広用紙の裏紙を貼っています。基本的に自由なお絵描きの場ですが、保育者が何も関わらないと、「大きな紙でなくてもよかったかな」という絵になります。裏紙とは言え大きな紙ですからそう簡単に用意できない環境です。「広い紙」ということに相応しい活動を目指したいところです。ここで必要なのは環境を構成する保育者の役割です。
この日、大きな紙を貼っていると年中組の子ども達が集まってきました。「何描くの?」と子ども。私が「百階建ては?」と言うと。「いいね」と子どもたち。「家」や「ホテル」というテーマは製作活動で取り組んでいたり生活経験があるためか、思い思いに描き始めました。友達と一緒に描きやすいテーマなので協同絵画にもなりました。仕上がりに子ども自身も満足感を感じる作品となりました。
荒尾第一幼稚園にはいくつかの絵画活動の場所があります。
「水の絵具」はきままなお絵描きの場。自分の痕跡と表現的解放を楽しむ場です。
「園庭のイーゼル」は、絵の具を使った自由なお絵描き。主として個人作品。紙は大量にもらった薄い紙。年齢によって「水絵の具」と同じような活動にもなったり、意図した作品を仕上げたりしています。時々「花瓶の花」」など描く対象を置いています。
「園庭巨大絵画」。テーマを設け、数日間かけて、仲間との協同絵画の活動です。ここでは「きままなお絵描き」はできません。共有された目的に向かう活動です。
中庭の「お絵描きの壁」は「園庭のイーゼル」と「園庭巨大絵画」の中間的の位置づけになるでしょうか。
意図的な作品を作る前に「落書き」的な活動が必要と思います。絵画に限らず生活廃材での製作活動も箱をただ組み合わせているうちに偶然できた、という作品から、完成形を目指して作る製作活動になっていきます。
それはiPadでの活動も同じです。ごっこランド年長組劇のBGM製作で、適当に操作して「曲ができちゃった」から、場面に合うような曲を目指して作る活動に変化していきました。子どもの育ちの前後でなく、同時に存在する製作の過程なのかもしれません。
「場所」や「活動」によって体験してほしい事柄は、保育者側から見たものです。子どもは、どこででも絵を描きます。地面にも絵を描きます。切り屑でも製作します。子どもたちの「創作意欲」と「もったいない」という大人の感覚と折り合いをつけて、子どもたちの成長に繋がる体験を考えていきたいと思います。