探索・探究・深い学び

入園説明会を令和3年10月23日(土)午前10時からオンラインで予定しています。くわくしは、ホームページの「入園のご案内」をご覧ください。

さら砂の採集

探索・探究・深い学び (園だより「風の顔通信9月号」原稿に加筆しています)

園長 宇梶達也

 荒尾第一幼稚園では子どもたちがすぐ遊び出せるようにできる限り物を出している。製作の材料、道具、画材。園庭でも保育室でも。学校の理科室のように大切な器具が棚にしまわれていると、幼児は「○○をつかいたいから、出して」と言うことがまだ難しい。目の前にあることでそれを触りたくなり使いたくなり、遊びが始まる。

 「これで何ができるだろう?」「これはどうか?」と目の前の物や事象の可能性を探ることを「探索」という。「これどうやって使うのだろう?」と物の性質や特徴を知ろうとしたり、「こうやってみたい」「こうやるといい」「どうすればそれが解決するか」と見通しや目的意識を持った活動を「探究」という。探索活動で気づき、発見、試行錯誤を行い、探究活動で予想・予測、比較、分類、確認などを行っている。幼児期の自発的な遊びは「1+1=2」を暗記させることよりも、はるかに大切な力を働かせている。探索から探究を経て課題を解決していく。探索と探究を比べると探究の方が高いレベルにあるように感じるが、探索でどれだけ豊かな体験をしているかがその後の「深い学び」に関係してくると思われる。これは本園の協同製作の実践を丁寧に振り返って得た実感である。「探索」の活動は、一見困っているように見える。困りながらも「深い学び」につながる知識の素が蓄積されている。その子の中にある既存知識と新しい知識が結びつくことで深い学びが生まれる。新しい知識は他者や物との対話によってもたらされる。

 本園の子どもたちは泥ダンゴ作りの時、木片を斜めにしてそこに砂を乗せ、振動を与えて、細かい粒の砂と荒い粒の砂を分離して「さら砂」を採取している。質量が大きいものが下に行く力が大きくなる三角関数の「斜面上の運動」を利用している。この場、この状況だけで知っている知識であって、数学のテストをしても答えることはできない(拡大解釈するとこのことを「領域固有性理論」と呼ぶのかもしれません。勉強中です)。この体験が「斜面上の運動」を学習する時に結びつくと、深い理解を伴った学びになることは想像できる。関連づける学習は精緻化戦略と呼ばれ、難しい問題を解く力になるという。OECDの調査によると日本の子ども達は自分で関連づけて学ぶことが少ないと指摘されているそうだ。関連づける知識の基礎は幼児期の多様な体験、探索で蓄積される。「関連づけること」そのものだと、物の見方や考え方、対話の機会が関係してくると思われる。

 幼児期の遊びの探索・探究には「斜面上の運動」のようにわかりやすいものでなくても、「深い学び」につながる知識の基礎がたくさんある。現在の教育で大切な「主体的・対話的で深い学び」。目的は「深い学び」だが、出発点は主体的な活動になる。探索や探究が始まるように子どもたちの興味関心や生活、育ちの段階から環境を考えて保育を行うのが環境を通した保育になる。

 本園の実践と以下の文献から得た知識で書いています。間違っている解釈があれば、私の勉強不足です。

参考文献

「幼児教育のデザイン」無藤隆
「幼児期の深い学びの検討探究過程の分析」日本教材文化研究財団
「深い学び」 田村学